データサイエンスのための物理学

はじめに

データサイエンスはとても幅の広い学問で、文系と理系の両方の知識が必要になってくる総合科学です。特に職業としてデータサイエンティストを選択しようとしている人の場合、データに合わせてその対象となる分野の理解は必要不可欠となります。

例えば、POSなどのデータを扱う場合には営業やマーケティング、人事系のデータを扱う場合は人事や採用に関する知識、会社経営の情報を扱う場合には財務や企業戦略、経営学などの理解が必要となります。

職業人としてのデータサイエンティストに求められることは幅広く、「データ解析だけ」ができるだけではやっていけないところが難しいところです。データサイエンティストを目指したい人は、なるべく早い段階、できれば学生のうちに文理双方の知識を学習しておいた方がよいと思います。特に文系の人は学校教育で理科系科目を選択しなかった傾向にあるようですので、データサイエンティストになりたい人は注意が必要です。

ここでは文系の方がデータサイエンスを学ぶ上で、一般教養として知っておいた方がよい物理学について,楽しく学べる書籍を紹介します。

ご冗談でしょう,ファインマンさん<上><下>  

岩波書店からでている大天才理論物理学者R.P.ファインマン博士の著書です。各1155円。

『少しだけ真面目に物理を勉強しようと言っているのに,いきなり読み物かよ!』とツッコミが入りそうです。しかし,あえてこのエッセイ集を1冊目にあげようと思います。ファインマン博士と言えば,朝永振一郎博士・シュウィンガー博士とともにノーベル賞を取った天才物理学者であり,マンハッタン計画などに参加していることでも有名です。しかし日本ではそれ以上に,その破天荒な性格といつでも好奇心いっぱいで,権威を嫌い自由というものをとことん愛し,追求した人物として有名です。『繰り込み理論のことは知らないけど,ファインマン博士のことなら知ってるよ』という文系人も多いのではないでしょうか?

この本は,そんなファインマン博士の好奇心いっぱいでわくわくするような毎日を送った日常を余すところなく綴った珠玉の一冊です。僕はこの本を大学生のころに読んだのですが,もし高校生のときに読んでいればまず間違いなく理系の大学に進学していたことと思います。文系大学に進んでいながら,独学でも,少しずつでも物理を勉強しようと思ったのは,ファインマン博士に出会ったからだと断言できます。ファイマン博士は今でも僕の人生の師匠であり、この人の考え方は生きていく上での原動力になっています。人一人の人生観を根底から変革してしまうくらい破壊力・影響力のある,類まれなる名著です。

物理法則はいかにして発見されたか 

岩波書店からでている大天才理論物理学者R.P.ファインマン博士の著書です。1155円。

ファインマン博士の本をもう1冊だけご紹介。これは読み物と言うには専門的で,専門書と言うには一般向きな,そんな中間的なところに位置する興味深い1冊です。コーネル大学で行った講演の内容が収録されています。お話は重力理論や量子論が中心となります。

ファインマン博士の語り口,少し硬くいえば論理展開は非常に秀逸で興味深く,聞き手のことを絶えず考えた独特の話しぶりには,聴衆を飽きさせない魅力が備わっています。この本でもその技術は遺憾なく発揮されており,物理を知らない文系人でも,細部はともかく大枠では理解可能で,最後まで読み通せると思います。僕は教員免許を持っているのですが,そういった教育者の視点から見てもファインマン博士は優秀だと思います。ファインマン博士の教授力・教授法は1つの終着点であり,教えるということに対する究極技法と言っても過言ではないと僕は思います。

マンガでわかる物理 力学編

オーム社からでている新田英雄先生, 高津ケイタ先生, トレンドプロの著書です。2100円。

『何の冗談だ?』と思われるかもしれませんが,これが以外に良書だったりします。特に高校で物理を選択しなかった方にはかなり役に立つ本だと思います。この『マンガでわかる~』のシリーズは以前から評価が高いことは知っていたのですが,さすがに自身の専門である統計学や因子分析の本は何か負けた気がして買う気になれませんでした。しかし,物理に関しては本当の初心者なので,『暇つぶしに読んでみようかな』といった気楽な気持ちで,とりあえず買ってみました。

読んでみてその評価の高さがわかりました。範囲は高校物理の力学です。コンパクトにまとまっており,テンポよく学習することができます。また,物理を理解するにはイメージが大切なのですが,このイメージを喚起するのにマンガという媒体が一役買ってます。まぁ,いろいろ言いましたが,中学物理で知識が止まっている方にはおススメです。

電磁気学のABC

講談社ブルーバックスからでている福島肇先生の著書です。903円。

電磁気学は力学と並んで重要な,現代物理学の根幹をなす分野です。物理学を真剣に学ぼうと思ったら,電磁気学は避けて通ることはできません。しかし,いきなり本格的な教科書で学ぶと挫折しやすい分野でもあります。そんなときはやっぱり読み物系の本から入るのがよいかと思われます。

ただしこの本は,単に読み物だけで終わっていないところがすごいところです。もちろん専門書のような詳しさ,厳密さはありません。しかし内容は質実剛健で,電磁気学の歴史的なことから高校物理で習う内容,そしてマクスウェルの法則までがきちんと順を追ってまとまっています。少しだけ教科書っぽいので,何も考えずに読み進めることはできませんが,たとえ高校物理を勉強したことがない方でも気合いとやる気さえあれば最後まで読み通せると思います。

高校数学でわかるマクスウェル方程式 

講談社ブルーバックスからでている竹内淳先生の著書です。903円。

マクスウェル博士は電磁気学の大成者として有名です。電磁気学を理解するということは,このマクスウェルの方程式を理解することと同義であるといっても過言ではありません。この本ではそのようなマクスウェルの方程式を主軸に据えて,電磁気学を基礎から説明しようとしています。位置づけ的には上記の『電磁気学のABC』をもう少し発展させたものというところでしょうか。

マクスウェル方程式は難しいです。世の多くの物理専攻の理系大学生を悩ませ,電磁気学をつまらないものと印象付ける概念であるようです。一口にマクスウェル方程式といっても,全部で4つあり,それらは積分方程式の形で記述されています。このような難物を高校数学だけで説明しようというのですから,この本がいかに意欲的な著作であるかがわかるというものです。

高校数学だけという一見すると『無理じゃないのか?』という制約ですが,マクスウェル方程式の最も簡単な場合だけに的を絞り,後は筆者の独特の切り口・語り口でそれを可能としています。最も,電磁気学の性質上,途中で周回積分といった高校数学では扱わないような概念も出てきますが,それらはすべて本文中でわかりやすく説明されていますので,看板に嘘偽りはありません。

これを読んでもマクスウェル方程式,と言いますか電磁気学を極めることができるというわけではありませんが,大学物理の雰囲気をつかむことくらいは可能です。本格的な教科書を読む前に読んでおくとよい超おススメの一冊です。

道具としての微分方程式

日本実業出版社からでている野崎亮太先生の著書です。2310円。

この本は「統計データ解析のための数学」のコーナーでも紹介しました。なので,内容に関してはそちらを参照してください。

ここでこの本を再度紹介したのは,やはり大学物理を学ぶにあたって微分方程式の知識は必須になるからです。物理をちょっとでも本格的に学ぼうと思って,物理の教科書を紐解くと,いたるところに微分方程式が散見されます。一番身近なところでいうと,力学で最初に登場するニュートンの運動方程式も微分方程式の形で書かれています。

一昔前なら高校数学のカリキュラムの中に微分方程式が入っていました(「どれだけ昔だよ」って感じですよね。ちなみに僕の時代でもすでに微分方程式は削除されていました)。なので,今よりもスムーズに大学物理に導入できたと思うのですが,現行課程では自分で最低限の知識を身につけておく必要があります。そういう意味でこの本はなかなか使えます。理論数学に走らず,あくまで物理のために微分方程式のさわりだけ知るのに最適です。

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氏名:福中公輔 学位:博士(文学)(早稲田大学) 所属:(学)産業能率大学総合研究所 部署:経営管理研究所 配属:組織測定研究センター 分野:データサイエンス 専門:統計学,データ解析,テスト理論 学会:日本心理学会    行動計量学会    計算機統計学会    データサイエンティスト協会